基板実装とは?基本の概要と種類

基板実装とは?その重要性と概要

基板実装は、電子機器の心臓部ともいえるプリント基板(PCB)に、抵抗、コンデンサ、ICチップなどの電子部品を取り付け、動作可能な回路を構築する工程です。基板は単なる「配線を集約した板」ではなく、電子機器の性能、耐久性、コストに直結する重要な役割を担っています。

基板実装の大きな目的は、以下の3つです。

  1. 電子部品の接続
    取り付けられる電子部品を正確に配置し、電気信号を円滑に流すための接続を確保します。
  2. 機械的な固定
    電子部品は基板にしっかりと固定され、振動や衝撃に耐える構造を提供します。
  3. 小型化・高密度化
    特に近年は、スマートフォンやウェアラブルデバイスなど、小型デバイスへの需要が高まり、基板実装には高密度化が求められています。

基板実装の主要な種類:表面実装技術(SMT)とスルーホール実装技術(THT)

基板実装にはいくつかの技術がありますが、現在主流となっているのは「表面実装技術(SMT)」と「スルーホール実装技術(THT)」の2種類です。それぞれの特徴と用途を見ていきましょう。

表面実装技術(SMT)

概要
表面実装技術(Surface Mount Technology)は、電子部品を基板の表面に直接取り付ける方法です。この技術では、部品のリード(足)を基板のパッドに接触させ、はんだ付けを行うことで固定します。

特徴

  • 小型化・軽量化に適している
    SMTでは部品を基板の表面に配置するため、スルーホールを必要とせず、部品の小型化や基板の高密度化が実現します。これにより、スマートフォンやウェアラブルデバイスのような小型機器に最適です。
  • 生産性が高い
    SMTは自動化が容易で、大量生産に向いています。専用のマウンター(自動実装機)を使用することで、高速で正確な部品配置が可能です。

課題

  • 振動や衝撃に弱い場合があるため、耐久性が求められる用途には適さない場合があります。
  • 非常に小型な部品や高密度な実装環境では、特殊な技術や設備が必要です。

用途
スマートフォン、ノートパソコン、テレビなどの家電製品や、IoTデバイスに多く使用されています。


スルーホール実装技術(THT)

概要
スルーホール実装技術(Through-Hole Technology)は、電子部品のリードを基板上の穴(スルーホール)に通し、裏面ではんだ付けする方法です。

特徴

  • 強度が高い
    スルーホールを通して部品を固定するため、振動や衝撃に強く、耐久性が求められる用途に適しています。
  • 手作業が多い
    自動化が難しいため、SMTに比べて生産効率が劣ります。ただし、試作品や少量生産では依然として採用されています。

課題

  • 基板の片面または両面を使用する必要があり、SMTに比べて高密度化が難しい。
  • コストが高くなる場合があります。

用途
産業用機器、航空宇宙機器、医療機器などの振動や衝撃に耐える必要がある製品に多く使用されています。


SMTとTHTの使い分け:ハイブリッド実装の登場

近年では、SMTとTHTを組み合わせた「ハイブリッド実装」が増えています。この手法では、基板の表面にはSMTで部品を実装し、大型部品や高強度が求められる部品にはTHTを使用します。これにより、コスト、生産性、耐久性のバランスを取ることが可能となります。

例えば、自動車のエンジン制御システムでは、耐久性が重要なコンデンサやコネクタ部分にTHTを採用し、それ以外の部品にはSMTを使用することで、性能とコストを両立させています。


基板実装の今後のトレンドと進化

基板実装は、IoTや5G、AIの進化に伴ってさらなる高密度化と小型化が求められています。特に、以下の技術が注目されています。

  1. 高密度実装(HDI)
    微細な配線を可能にするHDI基板は、スマートフォンなどで広く採用されています。
  2. フレキシブル基板
    曲げられる特性を持つフレキシブル基板は、ウェアラブルデバイスや折りたたみスマートフォンに適しています。
  3. 環境配慮型技術
    リードフリーはんだやリサイクル可能な材料を使用することで、環境負荷を低減する技術が求められています。

まとめ

基板実装は、電子機器の性能や信頼性を支える重要なプロセスです。表面実装技術(SMT)とスルーホール実装技術(THT)のそれぞれの特徴を理解し、用途に合わせて使い分けることで、最適な設計が可能となります。さらに、今後の技術革新により、より高機能で環境に優しい基板実装が実現するでしょう。